【Book Review】「都市縮小」の時代

まちに盛衰はつきものだが、産業構造の変化や人口の社会減などにともなって進行する都市の縮小を、持続可能な形にコントロールしていくための取り組みについて、日米独の事例で紹介している。取り組みの濃淡もあれば、当局者、住民の意識の濃淡もあり、都市を賢く縮小していくということは、言うほど簡単なことではないという事実も、淡々と触れられている。

 

本書には、わずかだが尼崎に関する記述もある。小学校か中学校の頃に4大工業地帯の一つとして習った阪神工業地帯の中心に位置する尼崎は、大阪に隣接する立地にも関わらず、人口減少に見舞われ、市は1980年から2030年までの半世紀で30%の人口減を推計しているという。これは、米国中西部の旧産業都市の人口減少とほぼ同じペースだという。パナソニックのプラズマパネルの中核工場があるような都市が、縮小都市であるという指摘そのものが茶屋にとっては意外だが、人口面でいうと、たしかに減少しているという。

 

尼崎というと、忍たまとか聖地巡礼とかいうタームしか思いつかないまでに腐った脳みそしか持ち合わせていない茶屋には、人口減少と都市縮小にどのような処方箋があるかはわからない。また、本書に紹介している都市における取り組みも、まだ部分的な成果を見せている段階にすぎず、その取り組みが有効かを判断できる段階ではない。

 

ただ、尼崎には、よそ者の私が見ても、46万の人口と、大阪に隣接した立地、阪神間を結ぶ充実した交通網の結節点にあるというアドバンテージがある。まちの活性化に向けて動き出している人々もいる。そして、私を含む一部の人々にとっての聖地でもある。だから何とかできるのではないか、無い知恵絞って考えてみたいと思った茶屋であった。

 

矢作 弘著 角川oneテーマ文庫