笑ひの効能

気のふさぐことの多いこの頃ですが、そんなときこそ笑いが求められているのかもしれません。笑いは心身ともにポジティブな影響をもたらすという研究もあるそうです。であれば、笑いの沸点が低いこの人は、きっと心身ともに健やかな若者へと育っていくのでしょう…。

 

 

 その日、守一郎は学園の休暇を曽祖父のもとで過ごすために街道を歩いていた。

 -ひいじいちゃん、街のまんじゅう屋で草餅買ってきてくれって言ってたな…。

 休暇で帰ると手紙を出したときの返事を思い出しながら歩く。

 -でも、ひいじいちゃん、自分で草餅って言っておいて、いざ買っていったら『そうじゃない、ぼた餅だ』なんて言い出すからな…。ワガママっていうかなんていうか…。

 内心ぼやきながらも、目当てのまんじゅう屋に向かう。ふと、その足が止まった。

 -あれ、なんだあの人混み…。

 ある屋敷の門前に人だかりができている。興味をひかれた守一郎は、潜り込むことにした。

「今度は勝ち戦だったらしいな」

「だったら、褒美が出た連中が街に繰り出すかもな」

「ああ。いいビジネスになるかもな」

 男たちの会話を耳にしながら人垣の先頭に出る。

 -おお、ホントだ!

 威儀を正して馬にまたがった侍や、火縄や槍を担いだ足軽が列をなして屋敷の門をくぐっていく。次いで、荷を担いだ夫丸たちが続く。足軽の人数も、荷もかなり多いようだった。

「聞いたか。忍者を捕まえたんだってよ」

「忍者? マジかよ」

 背後の話し声に思わずびくっとする。

 -忍者? 誰だろう。

 戦で敵方に捕らえられた忍者には無残な運命しか待っていない。情報を残らず吐き出すまで拷問され、最後には殺されるのだ。

「あれが忍者か」

 小さなどよめきが上がって、守一郎も視線を向ける。夫丸たちの一群の後ろに、後ろ手に縛りあげられて馬に乗せられた蓬髪の男がいた。両脇を槍を担いだ足軽が警護している。

「忍者だぞ」

 どよめきが一層高まり、男は伏せていた顔を少し持ち上げた。その顔を認めた瞬間、守一郎は叫び声を上げそうになって慌てて両手で口をふさいだ。

 -利吉さん!!

 

 

 

 

 -でも、利吉さんって超デキるフリーの忍者なんだろ? 敵にむざむざ捕まるなんてことがありえるか? てことは、あの人は利吉さんじゃなくてちょっと似てる人だったとか?

 軍勢は屋敷の塀の奥に消え、野次馬たちも散っていた。屋敷の門前で守一郎はひとり、惑乱しながらウロウロしていた。

 -いや、でもあれはどう見ても利吉さんだった!

 真相を突き止めるには屋敷の中に入らなければならないが、いま、屋敷の庭には侍や足軽たちが満ち溢れていてとても忍び込める状態ではない。

 -夜になったら忍び込むか。連中、勝ち戦ってことは今夜は宴になるだろうから…でも、待てよ?

 もし捕らえられたのが利吉だったら、その間に拷問でひどい目にあってしまうかもしれない。

 -やっぱ、すぐにも潜り込まないと…でも、どうする?

 ホドホド城で曽祖父から教わった忍術には、屋敷に忍び込む術もあったが、実際に試す機会はなかった。だから、踏ん切りがつけずにいた。

 と、中庭のざわめきが静まった。

 -なにごとだ?

 そっと中をうかがう。どうやら、軍勢を率いていた将がスピーチを始めるところらしかった。こほん、と咳払いした将が声を張り上げる。

「諸君、このたびの働き、まことに天晴れであった!」

 -へえ、武将ってこんなスピーチするんだ…。

 感心しながら耳を澄ませたとき、

「…手柄に応じた褒美をとらせよう。ほう、帯ですか、とな」

 中庭の空気が凍りつく。将の傍らに控える奉行たちが一斉に苦虫を嚙み潰したような表情で額に手を当てたり天を仰ぐ。 

「ぶっ」

 吹き出す声が静けさを破った。「ぶははははっ! 褒美が…ほう、帯! ぶははははっ!」

 けたたましい笑い声に、顔をこわばらせていた将兵たちが顔を見合わせながらざわめく。

「笑ってるのは誰だ?」

「あんな氷河期ギャグで?」

「どうかしてるぜ…」

 高まるざわめきの中で、奉行の一人が控えの侍になにごとかささやく。小さく頷いて走り去った侍が笑い声の主を見つけるのに時間はかからなかった。

 

 

 

「えっと…ホントに俺、ここに入っていいんですか?」

 当惑げに守一郎が辺りをきょろきょろ見回す。

「奉行殿のお召しだ。黙ってついて参れ」

 短く命じる侍に、慌てて両手で口をふさぐ。

 -まあ、お屋敷に入り込むことができたんだし、結果オーライか。

 思いがけず先方から屋敷に連れ込まれたことがまだ信じられなかった。だが、いま、自分は屋敷の薄暗い廊下を侍について歩いている。と、唐突に景色が開けて広間に通された。

「お前か。あの寒いギャグに大笑いしていたというは」

 広間の中央には、数人の奉行が床几に掛けていた。中央の奉行が腕を組んだまま声をかける。

「えっと…はい。俺です」

 とりあえず片膝をついて控えた守一郎が殊勝に応える。

「よろしい。では、お前を側仕えとして採用する。よくよくご奉公するよう」

「はっ?」

 何ごとかと守一郎が訊き返す前に、傍らの奉行が慌てて扇で口元を隠しながらささやきかける。

「よろしいのか、あんな素性も分からぬ子どもを、それもお代官様のお側に置くなど」

「かまわぬ」

 中央の奉行がささやき返す。「お代官様のあのギャグに笑った者を見るのは初めてじゃ。あれだけ笑いの沸点が低ければ、お代官様もさぞご満足されよう…その間に我らは静かに仕事ができる」

「なるほど」

 代官の氷河期級のギャグに辟易していた奉行たちが頷く。どう努力しても笑えないギャグを撒き散らしながらうろつく上司に愛想笑いを浮かべてやり過ごすより、笑い役を側に置いておく方が仕事の効率の上がるし、なにより精神衛生上も良いに決まっている。そうでなくても戦の事後処理で仕事は山積みなのだ。 

「これは命令じゃ。よいな」

 言い捨てた奉行は立ち上がると、傍らの奉行たちも続いて立ち上がった。

「はい、でも、あの…」

 思わぬ展開に守一郎があわあわと言いかける。

「なんだ」

「あの、俺、なにをすれば…」

「側に控えておればよい」

 面倒そうに言うと奉行は立ち去ってしまった。

 

 

 

 

「で、そなた、名をなんという」

 部屋に通された守一郎に、脇息に寄りかかっていた代官がさっそく声をかける。

「はい! 浜守一郎といいます!」

「はぁ、マシューは一浪とな」

「ぶっ…!」

 たちまち守一郎が吹きだす。

「はぁ、マシューは…」

 代官がニヤリとしてたたみかける。

「ぶははははっ!」

 こらえきれずに笑いだす守一郎だった。「マシューって、マシューってだれ…あひゃひゃひゃっ!」

「…」

 その様子を端に控えた侍たちが当惑しきった様子で見守る。

 -あの者、正気か…。

 -なにか悪いものでも食べたのではないのか?

「そなた、いいリアクションじゃ」

 満足そうに代官が言う。「どうもわしの高度なギャグについて来れない者が多すぎての。もう少しそなたのような感度の者がおらぬものかの」

「そんなことがあるのですか?」

 笑い涙をぬぐいながら守一郎が訊く。「御大将のギャグに笑わずにいられるなんてことが、ありえるんですか?」

「ありうるのじゃ」

 頷いた代官が、ふと口の端をゆがめる。「蟻を売るのはアリーじゃとな」

「ぶっ!」

 たちまち守一郎が反応する。「ぶははははっ! あ、蟻を売ってる、アリーってだれ…ぶははははっ!」

 

 

 

「ご評議の時間じゃ。そなたは下がっておれ」

 代官がつぎつぎに繰り出すギャグにひとしきり笑い転げた頃、控えていた侍が声を上げる。

「あ、はい」

 代官の部屋を退出した守一郎は、小姓に導かれて廊下を歩く。

 -う~ん、で、結局俺は何をすればいいんだろう。

 自分が笑い役として採用されたとは思いもしなかったから、これから何を命じられるのだろうと気を張っていたのだが、なにも命じられないまま退出させられてしまったことが不可思議だった。

 -ま、いっか。いずれなにかお役目を命じられるんだろう。

 だが、割り当てられた部屋に通された守一郎は、小姓の言葉にさらに当惑することになる。

「ここがお前の部屋だ。お召しがあるまでここにいるように。食事と風呂の時間はあとで知らせる」

 言うだけ言って立ち去ってしまった小姓が閉めた襖をぼんやり眺めながら、どういうことかと首をひねる。

 -つまり、とりあえずのお役目は終わったってこと? てか、お役目ってなんだったんだ?

 だがすぐに、考えを切り替える。

 -まあいいや。次のお役目まで時間がありそうだし、それまでは自由に動けるってことだ。さっそく利吉さんを探さないと!

 

 

 

 -意外に広いな…。

 天井裏に潜って屋敷の中を探るが、利吉の閉じ込められている場所はなかなか見つからない。

 -どうすっかな。

 天井裏に胡坐をかいて腕を組んであれこれ考えを巡らせる。

 -そうだ! こうゆうとき、ひーじーちゃんは…中の連中の話を注意して聞けって言ってたっけ。

 曽祖父の教えを思い出した守一郎は、廊下の天井裏から通りすがりの会話に耳を澄ませることにする。その効果はほどなく現れた。

「おい、戦場で捕らえたとかいう忍はどうした」

「とりあえず地下牢に入れてあるそうだ」

 ふと通りかかった侍たちの声に、反射的に耳をそばだてる。

 -地下牢があるんだ…道理で天井裏から探しても見つからないはずだ。

「で、なにか口を割ったのか」

「ていうか、取り調べは明日かららしいぞ」

「なんだそれ。いいのかよ」

「まあ、今夜は祝勝会だからな。なにも宴会の前に気分が悪くなるようなことをやることもないだろう」

「それもそうだな」

 宴会への期待で浮き立っている会話を耳にしながら、守一郎の背に冷たい汗が伝う。

 -気分が悪くなるようなって…やっぱ、連中、利吉さんを拷問するつもりだ!

 そして地下への通路を見つけるまでに時間はかからなかった。

 

 

 

「利吉さん」

 宴会が近づいて気もそぞろになった牢番が姿を消した瞬間を待っていた守一郎がそっと声をかける。

「誰だ」

 後ろ手に縛りあげられて胡坐をかいていた影が問う。

「忍術学園四年ろ組の浜守一郎です」

「忍術学園…だと?」

 まだ警戒しているのか固い声が返ってくる。

「そうです。利吉さんを助けに来ました」

「そうか」

「で、あの…」

 力強かった声が急に細くなる。「あの、俺、まだこーゆー鍵を開けるのニガテなんですけど、利吉さんは開けられますか?」

 利吉が脱力する。

「開けられないって…それでどうやって私を助けようと思ったんだい?」

「いやあ…」

 頭を掻いた守一郎が、それでも精一杯のヒーローらしさをにじませながら言う。「まずは利吉さんの縄を切ります!」

「ああ、頼むよ…」

 縛られた後ろ手を精一杯格子に近づけると、守一郎の手が伸びてきて苦無で縄を切り落とす。

「で、鍵を開けるわけだが…まさか針金を持っていたりはしないよね」

 あまり当てにならなそうな忍たまだから期待はしていなかったが、一応訊く利吉だった。

「あ、持ってますよ」

「え?」

 あっさり応える守一郎に思わず声を上げる。

「俺、これでも用具委員なんで…針金は大中小ありますし、縄とか金づちとかしころとか…どれにしますか?」

 商売でも始めるように石張りの床に懐から出したものを並べ始める。

「あ、ああ…この針金があれば十分だ」

 一本の針金を手にすると、鍵穴に差しこんで細かく動かす。と、カチャと音がして鍵が外れた。

「おお、すごい!」

 身を乗り出して眺めていた守一郎が思わず声を漏らす。

「よし。まずはここから脱出するぞ」

 牢の扉を潜り抜けた利吉だったが、立ち上がりかけたところで「うっ」と顔をゆがめるとうずくまる。

「ど、どうしたんですかっ?」

 先導しようとしていた守一郎が慌てて駆け寄る。

「ああ、実は足を撃たれてな…」

 片膝をついて右の太ももを押さえながら、うめくように言う。「かすっただけだから大したことはないはずなんだが、足がしびれている…」

「そんな…」

 守一郎が絶句する。「そんな大けがして歩けるわけないじゃないですか!」

 そして、頭の片隅で利吉が敵に捕らえられた理由にようやく納得する。

 -そうだよな。こんなケガでもしてなきゃ、優秀な忍者の利吉さんが敵に捕まるなんてありえないし。

 そして考える。

 -だったら俺が利吉さんを安全な場所までお連れしないと!

  

 

 

 

「とりあえずここに隠れていてください」

 あてがわれた部屋の納戸に利吉を連れ込んだ守一郎が声を潜ませて言う。

「ああ、すまない」

「傷は、大丈夫ですか」

「とりあえず止血したから大丈夫だ」

 小袖の裾をまくり上げた利吉の太ももには、裂いた手拭いが包帯代わりに巻きつけられていて、血がにじんでいた。「もう少し休めば、動けるようになる」

「でも、あんな人形でごまかせますか?」

 牢の中には、藁束でそれらしい形にしたものに利吉の服と覆面を被せたものを置いておいた。その代わりに、足軽長屋に干しっぱなしになっていた小袖を守一郎が拝借してきたのを羽織っている。

「もうだいぶ日が暮れてきている」

 部屋の格子窓から差し込む日に眼をやった利吉が言う。「地下牢のあたりは真っ暗になっているだろう。牢の外から灯りをかざしてもまず分からないさ」

「ならいいのですが」

 利吉が言うのなら大丈夫だろうと思った守一郎が、ホッとしたようにため息をつく。

「ところで、君はなんでこの屋敷にいるんだ?」

 逆に利吉に問われる。

「利吉さんが捕まってるのを見たので、なんとか屋敷に忍び込もうとしてたんです。そしたら、向こうから入れって言われて、おまけに総大将様の側でお仕えしろってことになったんです」

 それにしては、なにもお役目がないんですけど、と首をひねる守一郎だった。

「総大将?」

 不審そうに利吉が訊く。「この屋敷の主は代官のはずだが」

「え、そうなんですか?」

 守一郎が目を丸くする。「なんかすっごく偉そうだったから、俺、てっきり総大将様だとばっかり思ってました。てか、総大将様って呼んでも、違ってるって言わなかったし…」

「まあ、悪い気はしないのだろう」

 天然の順忍だな、と思いながら苦笑する。

「じゃ、ここで待っててください。納戸の戸閉めますね」

「君はどうするんだ?」

「今日はこれから祝勝会なんです。きっと俺、総大将様…じゃなくてお代官様の側にいろって言われると思うんです。それに、宴会が盛り上がってる間は牢のチェックもおろそかになるだろうし、みんなが酔っ払った後なら、利吉さんが脱出できるチャンスも作りやすいと思うんです」

「まあ、それはそうだな」

 思ったよりしっかり作戦を考えられそうな忍たまだ、と思いながら利吉は頷く。

「あ、そうだ。これ」

 戸を閉める前に、懐から包帯を取り出す守一郎だった。「食満先輩が善法寺先輩からもらったのを分けていただいたんです。よかったら使ってください」

「ああ、すまない」

 受け取った利吉が礼を言い終わらないうちに「浜守一郎、おるか」と声がして襖が開かれる。

「はい! ここに!」

 守一郎がいい返事をする頃には、納戸の戸はぴたりと閉じられていた。

 

 

 

 

「あひゃひゃひゃひゃひゃ!」

「ぎゃははは! おかしすぎて…腹が…いたい…」

「総大将様のギャグセンス、最高すぎますっ!」

 宴会の間中、代官の繰り出すオヤジギャグにいちいち反応して笑い転げる守一郎だった。代官は満足し、お付きの奉行たちは安心して酒を愉しみ、将兵たちは心置きなく盛り上がることができた。宴が果て、代官や奉行たちが引き上げるころには、そこら中に泥酔者が転がり、あるいは足取りのおぼつかない酔っ払いが仲間の肩を借りながら長屋へと帰っていく中、下働きの者たちがのろのろと片づけを始めていた。そして、泥酔したらしい足軽姿の男を介抱しながら裏庭の厠へ向かう守一郎を見とがめる者は、誰もいなかった。

 

 

 

 

「もう少しで学園です」

 夜更けの道を学園に向かう二人だった。まだ少し歩くのに難渋する利吉に手を貸しながら、守一郎は言う。

「ああ。君のおかげで助かったよ。たいした順忍の質だ」

「いやあ、利吉さんにそうおっしゃっていただくと…照れます」

 顔を赤らめた守一郎だったが、ふと考え込むような表情になる。

「それにしても俺、あのお代官様にお仕えしろって言われたのに、なんにもしなかったな…」

 -そうか。笑い係として雇われたことには気づかなかったのか…。

 内心思った利吉だったが、ここは口に出さないことにした。

「君があの代官に仕えたのはたった半日のことだからな…なにか言いつける間もなかったんじゃないかな」

「そうか、そういやそうっすね。別にお給料もらってもいないし。宴会でタダ飯食えたけど…あ、いけね!」

 納得したように頷いていた守一郎がいきなり声を上げる。

「どうした?」

「俺、ひいじいちゃんのところに忍術教えてもらいに帰るところで、みやげに街のまんじゅう屋さんの草餅を買うところだったんだ!」

「それは大変じゃないか」

 利吉も慌てたように言う。「私はいいから、君はそっちへ行った方がいい。心配しているんじゃないか?」

「そうかも知れないですけど…でもやっぱいいです」

 拍子抜けするほどあっさりと方向転換する守一郎である。

「やっぱいいって…」

「ひいじいちゃんには、今回は急用で帰れなくなったって手紙書きます。それより…」

 期待に満ちた眼で利吉を見つめる。

「…俺、利吉さんから忍術のお話を聞かせてほしいです! 医務室で手当てしながらでもいいんで、いろんな忍術のお話、聞かせてください!」

「あ、ああ…」

 それでいいのか、と利吉は当惑するが、

 -まあ、今回は厄介になったことだし、それで満足してくれるならいいか…。

 そう考えた利吉は、朗らかな声で応える。

「わかった。私にできる話なら、なんでも話そう」

「やった!」

 片腕を突き上げてジャンプした守一郎の声が弾む。「じゃ、利吉さん、学園に急ぎましょう!」

「おいおい、私はケガ人なんだぞ」

「あ、スイマセンでした…」

 二人の足音が消えていく先、もうすぐ学園の鐘楼が見えてくるはずである。

 

<FIN>

 

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