試練あるいは受難

原作51巻95ページの2コマ目のやりとりから派生してしまった妄想です。利吉と伝子さんがホントにデートしてしまったら…それはきっと利吉にとって大いなる試練であり、かつ受難なのでしょうw

 

 

「土井先生、山田先生。今日ここに集まってもらったのは、ほかでもない…」
 大川が重々しく口を開く。庭の鹿威しがこん、と音を立てる。その残響がいっそう庵のなかの静けさを際立たせる。張りつめた空気に、伝蔵と半助の表情に緊張がはしる。
「ここ数日、街にドクササコの凄腕忍者の部下が出没しているという」
「ドクササコの凄腕忍者の部下というと…」
「あの、白目ですか?」
 2人の声に軽く頷くと、大川は小さくため息をついて口を開く。
「だが、少し怪しい点もある」
「といいますと」
 伝蔵と半助が膝を進める。大川は咳払いをしてふたたび口を開いた。今度はその口調に明らかに当惑が混ざっていた。
「どうも、その白目は単独行動をしているようだ。そして、街の甘味どころを巡っているらしい」
「甘味どころ?」
 伝蔵と半助が思わず顔を見合わせる。
「そういうことじゃ。だが、あのドクササコ忍者が単独行動するからには、魂胆があるのじゃろう」
「たとえば、誰かと接触するとか…」
 半助がつぶやく。
「そういうことかも知れぬ」
 大川が腕を組む。
「これは、調査の必要がありますな…利吉にも手伝わせるとしましょう」
「利吉君、来ているのですか?」
 伝蔵の言葉に、半助が眉を上げる。
「おおかた、仕事が一段落したから、私を家に連れ戻すつもりなのでしょう。明日には学園に着くと手紙にありました」
「そうか」
 安堵したように大川の表情が緩む。
「山田先生と土井先生に利吉君が加われば、ドクササコにへんな勢力が加わったとしても安心して見ていられるのう」 

 

 

「あ、山田先生、土井先生!」
「利吉さんもいる!」
「3人でなにやってんスか?」
 翌日、街にやって来た伝蔵たちに声をかけたのは乱太郎、きり丸、しんべヱの3人である。
「お前たちこそ、こんなところで何をやっているんだ」
 半助が訊く。
「ぼくたち、街で評判のお汁粉屋さんに行ったんです!」
 しんべヱが満面の笑みで答える。
「あれはうまかったよな」
「うん。私もおかわりしたくなったくらい」
 きり丸と乱太郎が頷く。
「だよな。しんべヱなんか何杯お代わりしたんだっけ?」
「5杯! でも、もっと食べられたよ!」
 元気よくしんべヱが手を挙げる。
「おいおい。あまり食べすぎると夕食に障るぞ…」
 苦笑しながら半助が言いかけたとき、不意に乱太郎が声を上げた。
「あ! そういえば、お汁粉屋さんにドす部下さんがいました!」
「どすぶか?」
 伝蔵がいぶかしげに訊く。
「はい! ドクササコのすご腕忍者の部下の白目さんのことです。まだ名前が設定されてないし、いちいち言うと長いので略してます」
「白目だと!?」
 唐突に探していた人物の名前が生徒の口をついて出て、思わず伝蔵が声を上げる。
「ドす部下の白目さんがどうかしましたか?」
 乱太郎が首をかしげる。
「いやいや、何でもない…だが、ドクササコ忍者が出没するというのは穏やかではないと思ってな」
 取り繕うように伝蔵が苦笑する。
「ところで、そのお汁粉屋はどこにあるんだ?」
 さりげなく半助が訊く。
「この一本向こうの通りの…」
「お稲荷様の近くです」
「そうか」
 黙って聞いていた利吉がすっと姿を消すのを視界の片隅で確認すると、半助は爽やかに言う。
「では、私たちも後で行ってみるとしよう…お前たちはそろそろ学園に戻るんだ。いいな」
「「「は~い!」」」
 あまりに素直な返事に胡散臭さを感じた伝蔵と半助だったが、ともかく学園に向かって歩き出す3人の後ろ姿を見送ると、おもむろに利吉を追って汁粉屋へと向かった。

 


「…で、どうする?」
 歩きながら、乱太郎がさりげなく言う。
「え? どういうこと?」
 しんべヱはまだ何が言いたいのか分からないようだが、きり丸には意思は伝わったようである。
「トーゼン、行くだろ?」
「だよねぇ」
「ねぇ、乱太郎、きり丸、なに言ってるの?」
「だからさ…」
 足を止めた乱太郎が説明する。
「さっきのお汁粉屋さんに何かあるってこと」
「というか、ぜったい先生たちはあのドす部下のゆくえをさぐってるってことだよ」
「どーして?」
「それはわからない。でも、私たちがお汁粉屋さんの場所を教えたら、利吉さんがいなくなったでしょ? あれって、ぜったいお汁粉屋さんにいたドす部下の白目さんをさがしにいったんだと思う」
「それが分かってて、のこのこ学園に帰ってる場合か?」
 きり丸がいたずらっぽく笑いながら身を乗り出す。
「トーゼン、行くでしょ?」
 ようやくしんべヱにも事態が理解できたようである。満面の笑みで答える。
「行く行く!」

 


「あそこです」
 物陰に身を隠した利吉は、現れた伝蔵と半助にそっと告げた。ちょうど汁粉屋からドクササコの凄腕忍者の部下が出てきたところだった。
「さて、どうしますかな」
 伝蔵の呟きに、利吉が応える。
「白目とはいえ、ドクササコの忍です。ここは二手に分かれて動きを追った方がよいかと。誰かと接触するのだとすれば、相手方も把握しておかなければなりませんし」
「そうだな。では土井先生、背後からの追跡を頼みます。ヤツはなにやら書き付けをしているから、私と利吉はさりげなくヤツに近づいて内容を確認するとしましょう。利吉、よいな」
「はっ」
 てきぱきと指示する伝蔵に、軽く頷いた半助が素早く姿を消す。
「さて、利吉。われわれはヤツの書き付けの中身を探る必要がある」
「はい」
 改まったように言う伝蔵に、表情を引き締めた利吉が短く応える。
「ヤツは街の中で動いている。気付かれないように近づき、かつ周囲に怪しまれないようにするにはどうするか…分かっているな」
「え…?」
 まさか変装ではないでしょうね…と言いかけたところに、すでに女装した伝蔵の姿があった。
「ち…父上!」
「伝子さんとお呼び! これからデートを装ってヤツの動きを追うわよ」
「で、で、デート!?」
 その言葉が意味することの理解を脳が拒否する。ただ唐突に貞操の危機に瀕したことだけは感じ取った利吉がうろたえながら後ずさる。その腕を伝蔵がむんずと掴んで引き寄せる。
「いいから早く行くわよ!」
 


 -ちょっと見てよ、あのカップル。
 -なんなのあれ…ひどくない?
 利吉と女装した伝蔵がデートを装って通りを歩く。往来の人々が思わず後ずさって道をあける。誰もが、あたりはばからず腕を組んで歩く異形のカップルから放たれるオーラに言葉を失う。そんな中で、人影や通りに面した格子窓の奥からいくつもの鋭い視線が2人に向かって放たれていた。街の娘たちである。
 -どう思う? あのカップル。
 -誰がどう見たって、財産狙いよね。
 -あんまり見ない顔だけど、きっとあの女、大金持ちなのよ。
 -いくらイケメンだからって、ちょっと露骨すぎない?
 -そうそう。あんなに腕なんか組んじゃってさ…。
 -ちょっとくらいカッコいいからって、感じ悪いわよね。
 娘たちの敵意に満ちたひそひそ声は、利吉の耳にも届いている。
「…あの、父上」
 デートを装って、というより伝蔵に腕を取られて引っ立てられるように並んで歩く利吉が、いたたまれずにひそひそと囁く。
「伝子さんとお呼び」
「そ…それでは、伝子さん」
 いやそうに顔をそむけながら、利吉は棒読みで呼びかける。
「なぁに? 利吉さん☆」
 ぐっと伝蔵が身体を寄せてくる。背中を冷たいものが走る。
「そ、その…なんだか私、先ほどからずいぶん娘さんたちの冷たい視線を感じるのですが」
「それはね☆ ジェラシーですわよ☆」
「じぇ、ジェラシー!?」
「当然ですわ。こんな美しいお嬢さんと連れ立って歩いていたら、それは並みの娘は嫉妬の視線を送る以外になにもできないに決まってるでしょ」
 ほほほ…と勝ち誇ったような笑いを上げながら口元を指で覆う。自分に突き刺さる視線の熱量が増した気がした。
「そ…そうでしょうか」
「そうですわよ。だから利吉さんもそんなに恥ずかしがらないで、堂々としてらっしゃいな」
 急速に胃がきりきりするのを感じて、利吉は空いた手で腹を抑えた。
「どうかなさいまして?」
「いえ…その、私は恥ずかしいというより、辱められているような気がしてならないのです」
「まあ☆ 言葉遊びがお上手なのね」
「父上! 私は言葉遊びなど…」
 思わず声を上げそうになるが、その前にぬっと伝蔵が顔を迫らせる。
「あんまり大きい声を出すと、路上でチューしちゃうわよ…!」
 父親の恐るべき脅迫に、屈するしかない利吉だった。

 


「土井せんせ!」
 物陰から様子をうかがっていた半助に、乱太郎が声をかける。
「なんだお前たち。学園に戻れと言っただろう」
 とっくに3人の気配が近づいていることに気付いていた半助は、顔色も変えずに言う。
「だって面白そうだし」
 きり丸が興奮を抑えきれないように言う。
「なにが面白いだ…相手はドクササコ忍者なんだぞ。そんな呑気なことを言っている場合ではない」
「というか、あの2人はなにやってんスか?」
「見ればわかるだろう。デートを装って近づこうとしているところだ。ヤツはなにやら書き付けをしているからな」
「それはムリだと思います」
 乱太郎が落ち着き払って断言する。
「どうしてだ?」
「だって、山田先生と利吉さん、街じゅうの人の注目を浴びてますよ。あれじゃ、ドす部下がにげちゃいます」
「まあ、たしかに…な」

 


「さ、利吉さん、私すこし疲れましたわ。あのお茶屋さんに寄りません?」
 腕をからませたまま、伝蔵は茶屋に向かって歩き出す。逃げるすべもなく利吉も身体ごと連行される。異形のカップルが歩む方向を変えたので小さなどよめきが上がり、往来に立ちすくんでいた人々が慌てて道をあける。その先には、茶屋の店先の床几に腰を下ろしているドクササコ忍者の姿があった。
「これからヤツの脇をさりげなく通って店の奥に入る。利吉、ヤツの持っている書き付けをしっかり眼に焼き付けるのだ。いいな」
 相手はプロの忍である。うっかり矢羽根など使えばこちらも忍と自らばらすようなものである。そう判断した伝蔵は、いちゃつくように利吉に身を寄せて微かにささやく。
「しかし父上…」
「声が大きいわよ! それに、伝子さんとお呼び!」
 再び身を寄せた伝蔵が、唇を頬に触れんばかりに近づけて鋭くささやく。
「しかし、ヤツはもうこちらに気付いてますよ」
 観念した利吉が、伝蔵の耳に顔を寄せる。いかにもみそかごとをささやくように掌で口元を覆う。恥じらうように袖で顔を覆った伝蔵が、潤んだ瞳でちらと見上げる。思わず利吉は眼をそらす。
 -見た? あれ!
 -信じられない! あんなに顔を寄せてささやきかけるなんて…!
 -くやしい! なんであんな女なんかに!
 娘たちから放たれる視線は、もはや憎悪のレベルに達していた。全身に熱した火箸を突き立てられているような――そんな拷問があればの話だが――責め苦に苛まれているような気がして、利吉の意識が薄らいでいく。

 


「土井先生、いいんですか? 利吉さん、顔色がすごく悪いですよ」
 物陰から様子をうかがっていた、乱太郎が気がかりそうに言う。
「もうすぐドクササコ忍者に近づくことができる。利吉君には、それまで我慢してもらうしかない」
「その前に、利吉さんがもたないんじゃないスか?」
 きり丸が頭の後ろで腕を組む。
「なんだかんだ言っても親子だ。仮に伝子さんに口吸いされても、利吉君ならきっと堪えてくれると思う…よし、もうすぐだ」
 だが、半助の言葉を裏切って、ドクササコ忍者は自分に向かって歩いてくるカップルに、ぎょっとしたように立ち上がると、そそくさと支払いを済ませて人ごみの中に姿を消そうとした。
 -まずい! これは方針変更だ!
 半助が素早くその姿を追う。その後を、慌てて乱太郎、きり丸、しんべヱが追いかける。
「たいへんだ! ドす部下がにげる!」
「つかまえろ!」
「お、おい! 待てお前たち!」
 距離を置いて相手を追尾しようとする半助を抜いて、乱太郎たちが声を上げながら追いかける。
 -あぁ、これで作戦は台無しだ…。
 これだけ大声を上げて追いかけては、もはや相手にもう一度さりげなく近づいて書き付けを盗み見るなどムリな話である。
 -だがおかしい…。
 逃げるドクササコ忍者の動きに、半助のアラートが反応する。
 -ドクササコ忍者なら、もっと素早く動くことができるはずだ。あの足の運びはまるで老人だ…ひょっとしてあれは、あの人の変装では…?
 そう思っている間にも、ドクササコ忍者に追い縋った乱太郎たちが背後から飛びかかって押し倒す。
「つかまえたぞ! ドす部下の白目め!」
「さあ観念しろ!」 
 手足をばたつかせて抵抗するドクササコ忍者を抑えつけながら、乱太郎ときり丸が背後を振り返って呼ぶ。
「しんべヱ、早く来い!」
「コイツの背中に乗っかって!」
「うん!」
 ようやく追い付いて大きく頷いたしんべヱが、どすりとその背中にまたがる。「ぐ」と声を漏らして抵抗がやんだ。
「やった! ドクササコ忍者をつかまえた!」
「先生! 早くきてくださーい!」
 こちらに向かって駆けてくる半助に向かって手を振りながら声を上げている乱太郎たちに、しゃがれた声が聞こえてきた。
「ま、待て待て、わしじゃ、竜王丸じゃ」
「へ!?」
「りゅ、竜王丸さん!?」
 乱太郎が素っ頓狂な声を上げる。ようやく半助が追いつく。乱太郎たちに取り押さえられていたのは、いつの間にか変装を解いた竜王丸だった。
「と、とにかくしんべヱ、背中からどいてくれぬか…苦しくて息ができんわい」
「あ…ごめんなさい」
 しんべヱが背中から降りるとようやく息が楽になったのか、竜王丸は深く息を吐きながらよろよろと身を起こそうとする。
「竜王丸さん…なぜここに?」
 助け起こして背中や腕の土埃をはたきながら半助が訊く。
「ふむ、大川殿に頼まれてな」
 やれやれ、と立ち上がりながら竜王丸は答えた。
「学園長先生に?」
 きり丸としんべヱが首をかしげる。
「そうじゃ。大川殿に、街に新しくできた汁粉屋の評判を調べてほしいと頼まれてな。どうやら如月さんとのデートに使うつもりらしい」
「でも、なんでドす部下なんかに変装してたんですか?」
 乱太郎が訊く。
「それはな、まあ、気が向いたからじゃ。最近ドクササコの白目がこの街でよく買い食いしていると聞いてな。あやつなら汁粉屋にいても馴染んでおるだろうからの」
 どさっ、と音がした。皆が振り返ると、いつの間にか伝蔵とともにその場にいた利吉が膝をついて座り込んでいた。うつろな視線は宙をさまよい、半開きになった口からうわごとのような声が漏れだす。
「…そんな、そんなことのために私はあんな目に遭ったというのですか…女装した父上とデートの真似事までした作戦行動は、街中の娘さんから冷たい視線を浴びてまでした作戦行動は、こんなことのためだったのですか…」
「ま、まあまあ、利吉君…さいわい戦の準備ではないことが分かったわけだし…」
 半助がとりなすように声をかけるが、利吉のうわごとは続く。
「…もう、もう二度と私はこの街を歩くことはできないのですよ…街じゅうの娘さんたちを敵に回してしまったいま、私はこの街では社会的に抹殺されたも同様なのですよ…」
「そんなもんなの?」
 しんべヱがひそひそ声で訊く。
「そりゃそうだろ。女の人ってのはすげえ情報通なんだぜ。それなのにあんなの見せびらかしたんじゃ、利吉さんもう二度とこの街の娘さんたちには口きいてもらえねえぜ」
 きり丸が解説する。
「そりゃたいへん。娘さんたちの誤解を解かなくちゃ」
「乱太郎…それホンキで言ってるのか?」
 呆れたようにきり丸が突っ込む。
「どうして?」
「だってよ、私は忍者で、あれは女装した父親との作戦行動でしたなんて言えるわけねぇだろ」
「あ、そりゃそうだね」
「乱太郎ったら、あわてんぼさんだね」
 しんべヱに言われて3人はあははは…と笑い声を上げる。
「こらお前たち! 何がそんなにおかしいっ!」
 利吉が叫ぶ。
「あわわっ、にげろー!」
「待てこらっ!」
 逃げ出した3人を利吉が追う。
「さて、我々も戻りますか」
「そうね。学園長先生にもご報告しないとね」
「あの、山田先生」
「伝子さんとお呼び」
「では伝子さん…いつまで女装しているおつもりなんですか」
「もちろん、学園に帰るまでよォ。ささ、行きますわよ、半助さん☆」
 半助が身をかわすより一瞬早く腕を取ると、伝蔵はぐっと引き寄せた。
「い、いや、そのですね…街の娘さんたちが見ていますし…」
 おっとっと…とバランスを崩しかけながら、半助はあわあわと言う。
「だから、それはジェラシーですわ☆」
 -ちょっとなにあの女…!
 -あんなにあっさり男を乗り換えるなんて!
 -それにホイホイついてく男の方もどうかしてるわよ!
 娘たちの視線が、新たに表れたカップルに向き始める。
 -うわ、これはかなわんな。
 先ほどの利吉と同じ轍を踏むことだけは避けなくてはならない。半助は素早く頬かむりをすると、腰に提げていた笠を目深にかぶった。
「あら、半助さん。そんなに笠を目深にかぶったのでは、伝子が顔を寄せることができなくなってしまいますわ」
 科をつくりながら伝蔵が抗議する。
「いや、これでいいのです…」
 視線を合わせないようにまっすぐ前を向いたまま、半助はすたすたと歩き続ける。
「まってくださいな、半助さん」
 小走りに追い縋りながら伝蔵が言う。
「だから、もう伝子さんでいるのはやめてくださいっ」
「私は伝子ですわ。ねえ、ちょっとまってくださいな…」
「だからっ! もう山田先生に戻ってくださいと言ってるでしょう!」
「伝子さんとお呼びと言ってるでしょ、半助!」
 いちゃついているのかもみ合っているのか分からないカップルが足早に通りを後にする。

 

 

<FIN>