雨夜の品定め

源氏物語の帚木の帖にある有名な雨夜の品定め、貴公子たちが女性論を交わす場面ですが、ここでは口さがないくノ一教室の女の子たちに展開してもらいました。果たしてどんな話が飛び出すことでしょう。

 

 

「よく降る雨ね」
「ほんと。こんな雨じゃ自主トレ行く気にもなれないわよね」
「そうそ。それにおフロに入っちゃったでしゅし」
 初夏の夜だった。しとしとと降る雨が庭先の水たまりを打つ。くノ一教室の長屋の縁側でユキ、トモミ、おシゲが所在なげに佇んでいた。
「でも寝るにはまだ早いのよね」
 腕を組んだユキがため息をつく。
「しょうがないわ。明日の予習でもしましょ」
 部屋に入ったトモミが文机の前に座る。
「でしゅね」
「あ~あ、しょうがないっか…」
 頷いたおシゲと伸びをしたユキが続く。

 


「そういえば、この前しんべヱ様が…」
 ノートになにやら書きつけていたおシゲがふと筆を止めて顔を上げる。
「しんべヱがどうしたの?」
 ユキとトモミも顔を上げる。
「この算術の解き方が分からないってわたしに聞きにきたんでしゅ」
「で、教えてあげたの?」
「はい。そこに土井先生が通りかかって…」
「あ、もう続き分かった」
 いたずらっぽくユキがニヤリとする。「いつもの『教えたはずだ~っ!』でしょ?」
「正解!」
 おシゲもぷっと吹きだす。
「相変わらずね、一年は組は」
 トモミが肩をすくめる。「ホント、いつも土井先生はすごいって思っちゃう。あんなに何教えても覚えられないの相手にしててよくガマンできてるなって。庄左ヱ門は別かもしれないけど」
「それに、なんってったってイケメンだし背が高いし!」
 ユキが声を弾ませる。
「まったくユキちゃんたら、土井先生が大好きなんでしゅから」
 さめた眼でおシゲが言う。
「だって事実じゃない」
 うっとりとユキが続ける。「それに、なんとなく謎めいた雰囲気もあって、それがまたたまんないのよね…」
「たしかに」
 トモミも頷く。「いつもは明るく笑ってるけど、なんかその裏に影みたいなのもあるのよね。それがミステリアスっていうか…」
「そうそう!」
 ユキが身を乗り出す。「そう思うでしょ?」
「きり丸はお休みの時はいつも土井先生のお家で過ごしてるって…」
 おシゲが筆尻を顎に当てる。「でも、土井先生の昔のことはなんにも知らないそうでしゅ」
「ああ、きり丸じゃだめね」
 肩をすくめたユキが大仰に首を振る。「だってゼニのことしか眼中にないじゃない」
「たしかに」
 トモミも頷く。「でもおシゲちゃん、学園長先生から、先生になる前の土井先生のこと、なにか聞いたことはないの?」
「聞いたことはあるんでしゅが、ダメでした」
 おシゲが首を振る。「おじいしゃまもよくは存じ上げないそうでしゅ。それに、昔のことをあれこれ聞くのはエチケット違反だって」
「まあそうかもしれないけど」
 ユキが両手を頬に当てる。「でも、それがまたミステリアスでいいのよね…」

 

 

「ねえねえ、なに話してるの?」
 襖が開いて現れたのはそうことしおりである。
「あら、そうこちゃんとしおりちゃん、どうしたの?」
 トモミが声をかける。
「だって楽しそうな話してたみたいだったから! 私たちもまぜてよ」
 言いながらさっそく文机の前に座るそうこである。
「ごめんね。でも、勉強中じゃなかったの?」
 文机の上に散らかった本や硯に眼をやったしおりが訊く。
「ああ、なんか予習なんかどーでもよくなっちゃって。土井先生の話してたら♡」
 まだ上気した顔でユキがうっとりと言う。
「ああ、なるほどね」
 頷くそうこに続いてしおりも気づいたように口を開く。
「そういえば、土井先生ってあんなにカッコいいんだから、もうちょっと身なりも気にしたらいいのにっていつも思うんだけど」
「ああそうよね。制服はいつも火薬臭いし、私服だって薄汚れてる感じだし」
「烏帽子だってヨレヨレだし」
 トモミも続ける。「それに私服の時だってけっこう火薬臭いのよ。気づいてるのかしら?」
「火薬委員会の顧問なんだからしょうがないんじゃない?」
 いつの間にか懐から出した饅頭をぱくつきながらそうこが言う。「よく火薬の研究もされてるって話だし」
「それじゃ、火薬委員会もみんな火薬臭いの?」
 ユキが怖気をふるうように肩に手をやる。「あのニオイ、どーしても好きになれないんだけど」
「斉藤タカ丸先輩はぜんぜん違うわよね」
 しおりが首をかしげる。「どうしてかしら」
「タカ丸先輩はまだ学園に入ったばかりだからじゃない?」
「それはそうかも」
「じゃ、伊助と三郎次は?」
 そうこが訊く。
「あ、ぜんぜん眼中にない」
 皆が頷く。

 

 

「でも、タカ丸先輩はきっと火薬くさくならないように気を付けてると思うのよね」
 ユキが妙に自信ありげに言う。
「どうして?」
 そうこがすかさず訊く。
「だって、タカ丸先輩、ときどき実家の髪結い床を手伝ってるじゃない? あそこで火薬のにおいなんかさせてたら、いくら幸隆さんやタカ丸先輩に結ってもらえるっていってもお客さんは逃げちゃうと思うのよね」
「それって、お客さんのことを考えてるってことで、ステキだと思いましゅ」
 感嘆したようにおシゲはうっとりとする。「ああ、またステキな髪形に結ってくれないかしら」
「そうよねえ」
「私もそう思う」
 トモミとしおりも大きく頷く。
「でも、最近なかなかチャンスがないのよね。四年生の先輩の髪ばっか結って遊んでるみたいだし」
 ユキが大仰にため息をつく。
「でも、アイドル学年って言われるわりにはタカ丸先輩に結ってもらってもちっともイカした感じにならないし」
 そうこが指先についたあんこをなめながら言う。
「アイドル学年なんて誰が言ってるのよ」
 ユキの指摘は容赦ない。
「まあなんとなく、一部の世論」
 とぼけたそうこが次の饅頭を懐から取り出す。
「年が違うからしょうがないんだろうけど、タカ丸先輩と比べると幼いって感じがするのよね」
 トモミの指摘はさらに厳しい。
「そうそう。なんか道具にやたら女の子の名前つけちゃったりして、キモチワルさしか感じないんだけど」
「綾部先輩は落とし穴だのタコツボにも女の子の名前つけてましゅ」
 さめた眼でおシゲも付け加える。
「あ~、あれホントにメーワクよね。ときどき合印置き忘れてるし」
 ユキが声を上げたとき、「なに話してるの」の声とともに襖が開いた。
「ああ、あやかちゃんと恵々子ちゃん」
 振り向いたそうこが声をかける。
「ひどい雨ね」
 恵々子が髪に手をやりながら入ってくる。「雨が降るとくせが強くなるから困るのよね」
「でも恵々子ちゃんの髪型ステキでしゅ」
 おシゲが傍らに座った恵々子の髪を指先に取る。「すごく大人っぽくてうらやましいでしゅ」
「ありがとう、おシゲちゃん」
 おっとりと首をかしげる恵々子だった。「それで、何の話をしてたの?」
「ああ、ちょっと四年生の先輩たちのお話でしゅ」
 おシゲの声が冷める。
「みなさん個性的よね」
 これ以上もなくあっさりと話をまとめられて皆がもうこの話題は終わりかと思ったが、恵々子は何事もなかったように続ける。「そういえば浜守一郎先輩なんだけど」
「え? まさか恵々子ちゃん、浜先輩が気になるってわけ!?」
 意外な展開にユキが頓狂な声を上げる。
「気になるっていうか…」
 ウエーブがかった髪をかき上げながらうつむき加減に恵々子は言う。「なんかちょっと影があるところが…」
「影がある?」
 トモミがおシゲと顔を見合わせる。「あの安藤先生の超さむいおやじギャグに大笑いしちゃう先輩が?」
「それにやたらと籠城したがるって、しんべヱ様が言ってました」
「この前、鐘楼から遠くを見てるのを見かけたの」
 燭台の灯に眼を向けながら恵々子は続ける。「なんか、いつもと違う表情だったの。孤独っていうか、寂しげなんだけど凛々しい感じもあって…」
「えっと…まあ、恵々子ちゃんの感想は尊重するとして」
 一緒に入ってきたあやかが取り繕うように言う。「なんで四年生の先輩方のお話になってたわけ?」
「そういえば…タカ丸先輩の話をしてたついでって感じかしら」
 片手を頬に当てたトモミがあっさりと片付ける。「別にどうでもいいんだけど」

 

 

「ていうかさあ、久々知先輩って美白だと思わない? ハッキリ言って自分で『眉目秀麗!』なんて言っちゃってる滝夜叉丸先輩よりよっぽどキレイな肌してるなって思うんだけど」
 もう四年生の話は終わりとばかりにユキが話題を転換させる。
「そうそ。それにまつげもピュッって伸びててさ。女装したらけっこうイケるんじゃないかって思うんだけど」
 そうこが大きく頷く。
「でも、中身は男って感じなのよね。それに成績優秀なんでしょ?」
「ちょっと火薬臭いんだけど、あの美白なら許せるって感じ」
「天然っぽいところもあるらしいわよ」
 次の話題は兵助に移ったようである。
「そういえばいつも気になるんでしゅけど」
 言いにくそうにおシゲがもじもじする。
「どうしたの、おシゲちゃん」
「そうよ、この際だから気になることがあるなら言っちゃいなさいよ」
 ユキとそうこが気軽に声をかける。
「いや、どうってことはないんでしゅけど…久々知先輩と竹谷先輩、いつも一緒にいらっしゃるなって…」
「そういやそうよね」
 トモミが顎に手を当てる。「クラスも委員会も違うのにどうしてかなって私も思ってた」
「つまり仲がいいってこと? …その、あっちの意味で」
 身を乗り出したユキが声を潜める。
「あっち?」
「うそ」
「まさか」
 両手を口に当てたそうこ達が黄色い声を上げそうになるのを必死にこらえる。
「でも、あるあるじゃない? 忍者って多いらしいし」
 訳知り顔にユキが続ける。「それに、不破先輩と鉢屋先輩だって」
「てか、鉢屋先輩はあからさますぎるでしょ」
 そうこが肩をすくめる。「誰が見たって不破先輩のこと大好きすぎでしょ」
「それにしては不破先輩の反応がよくわかんないのよね」
 トモミが肩をすくめる。「嫌がってるとか喜んでいるとかいうのと別次元というか…」
「不破先輩ってあれですごい大雑把っていうじゃない?」
 ユキが指摘する。「実は本気でなんとも思ってないかも」
「てことは、鉢屋先輩の片思いってこと?」
 しおりが首をかしげる。
「う~ん、そこが難しいところなのよね」
 ユキが腕を組んで考え込む。
「てか、それ考えるとこ?」
 そうこが突っ込む。「どう見たって不破先輩も鉢屋先輩を当てにしてるじゃない。不破先輩の迷い癖が出たときなんか、鉢屋先輩がさくさく決めてるし」
「なるほどねえ」
 しおりがおっとりと頷く。「そうこちゃん、よく見てるわねえ」
「別に私だってずっと観察してるわけじゃないわよ?」
 そうこがしおりに向き直る。「ただ、どうしたって眼につくでしょ? 名物コンビっていわれるくらいなんだから」
「とすれば残るは尾浜先輩だけど」
 ユキが指折り数える。「髪型以外、あんまりインパクトなくない?」
「たしかに、夜でもシルエットで分かるわよね、あの髪型」
 そうこが頷く。
「でも五年い組なんでしょ? 実はけっこうできる先輩なんじゃない?」
「そうなのかもしれないけど、どっちかというと天然って印象なのよねえ」
 片手を頬に当てたしおりが小さく頷いて、勘右衛門の話はあっさり終了する。

 


「天然っていえば、六年ろ組の七松先輩と中在家先輩もそんな感じしない?」
 そうこがおもむろに口を開く。
「天然っていうのかしら、ああいうの」
 おっとりと首をかしげる恵々子だった。「天然っていうより確信犯的にキャラが立ってるように見えるんだけど」
「確信犯的って…」
 けっこう激しいこと言うのね、とトモミが軽く眼を見開く。
「でも、七松先輩と中在家先輩って会話が成り立ってるのかしらって思うことはありましゅ」
 おシゲも思うところはあるようである。
「たしかにね」
 ユキが頷く。「中在家先輩の通訳ができる人って、六年生の先輩か図書委員会しかいなさそうだし」
「でも、七松先輩は分かってるっていうか、何が言いたいか分かるってところじゃないかしら」
 しおりが深いことを言う。
「ああ、それなんとなく分かる」
 トモミも頷く。「七松先輩ってすっごい大雑把そうで、実はそういうところは細やかそうじゃない?」
「それって、中在家先輩限定ってこと?」
 三つ目の饅頭をもぐもぐしながらそうこが言う。
「ねえ、そうこちゃん、ちょっと食べすぎじゃない?」
 あやかが呆れたように突っ込む。「あんまり夜に食べるのよくないと思うけど」
「そお? 育ち盛りの少女はもっと食べなきゃって思うんだけど」
 全く堪えていないそうこである。
「でも、いくらなんでもしんべヱと勝負するのはやばくない?」 
「そうそ。しんべヱ様は特殊なんでしゅから」
 トモミに続いておシゲも口を開く。
「いやだ、しんべヱと一緒にしないでよ」
 そうこが口をとがらせる。「私はひとつひとつ味わって食べてるんだから。しんべヱみたいに手当たり次第に掻きこんだりなんかしないわ」
「それ、本気で言ってましゅか?」
 おシゲが冷めた眼で訊く。「潮江先輩に体重当てられそうになったからって、あそこまでボコボコにしたってことは…」
「そんなの当然でしょ」
 憤然とそうこが言う。「だいたいレディーの体重をみんなの前で言おうとする時点でデリカシーのカケラもないし、それにあの流れは私もしんべヱもだいたい同じ体重って言いたげだったじゃない! そんなの許せるわけないでしょ!」
「まあたしかに、潮江先輩にデリカシーを求めること自体がないものねだりっていうか…」
「そもそも体重みたいなセンシティブ情報を公言しようとする時点でアウトよね」
「それにいつもギンギン言ってるし」
「眼の下に隈があるし」
「なんか暑苦しいし」
「むさくるしいし」
 一気に貶められる文次郎である。本人がその場にいたら憤死していたかもしれない。
「それに比べて立花先輩はクールよね」
 あやかが両掌を握りしめる。
「サラサラストレートヘアは学園一だし」
「ステキな髪よねえ」
 トモミと恵々子が大きく頷く。
「でも、けっこうナルシストなんでしょ?」
 容赦なくユキキが突っ込む。
「ユキちゃん…なんでそんなこと知ってるの?」
 鼻白んだトモミが訊く。
「だって、あの髪をばってやりながら『カンっペキだ』とか『予備がある』とか言ってる時の表情なんて、誰が見たってナルシズムじゃない」
「ま、まあ、そうかもしれないけど…」
「そういえばしんべヱ様がおっしゃってましたが、立花先輩はブチってキレるとすっごく恐いそうでしゅ」
「どんなふうに?」
 興味をひかれたようにそうこが訊く。
「そりゃ立花先輩の得意武器は焙烙火矢でしゅから」
 淡々とおシゲが続ける。「焙烙火矢を投げまくり、爆発しまくりなんだそうでしゅ」
「…うそ」
「それ、よく生き延びられたわね…」
 あまり火器を扱うことのないくノ一教室にとっては、焙烙火矢はもっとも危険な武器のひとつと教えられていた。
「まあ、死にそうにはなるみたいでしゅけど、毎度」
 その原因についても聞き及んでいるおシゲにとっては、あまり同情できない結果である。
「そう。見た目と本性は別ってことなのね」
 黙って聞いていたしおりがあっさりと結論を下す。
「そっか。やっぱ裏表がある人ってヤバいわよね。そんなの彼氏にしないように気をつけなくちゃ」
 ユキが追い打ちをかけるように言う。

 

 

「善法寺先輩も、ステキなんだけど問題物件だと思わない?」
 もはやノンストップのユキである。
「そうよね。とっても優しくて、医学の知識もすごいみたいだけど、あの不運がね…」
 大仰に首を振りながらそうこが肩をすくめる。
「不運大魔王とか言われてるんでしょ?」
「まあ、綾部先輩の落とし穴にもよく落ちてるし」
「乱太郎がよく『保健委員会は不運委員会』なんて言ってるけど、善法寺先輩のせいかしら」
「さあ。そればっかりは善法寺先輩が卒業しないと分からないんじゃないかしら」
「それはそうかもね」
「でも、不運っていったら食満先輩もかなりなものらしいわよ」
 勝手に話が進んでいくところにトモミが留三郎の話題を持ち出す。
「ああ…そういえば」
「あれって同室効果なのかしら」
「不運そのものが移るってこと?」
 たちまち話題は留三郎の不運に移る。
「そもそも食満先輩って善法寺先輩の保護者みたいじゃない?」
 言いながらユキが身を乗り出す。
「たとえば?」
 興味深そうにそうこが訊く。
「だって善法寺先輩が山に薬草取りに行くときは、必ず食満先輩がついていくらしいわよ。ボディーガードってことで」
 どこからか仕入れた話をユキが訳知り顔に披露する。
「でも、善法寺先輩だって六年生なんだし、いまさら山に行くのにボディーガードって…」
 信じられないといった風にしおりが首を振る。
「でも、本当に食満先輩のボディーガードがなかったら生きて帰れなかったかもってことがあるらしいわよ。熊やイノシシに襲われたり、落石や倒木にあったり、崖から落ちたり縄が切れたり…」
「それ、忍者っていうより人間としてこのさき生きていけるのでしゅか…?」
 唖然としたおシゲが呟く。
「まあ、でも、お医者さんとしてうまくいけば、食満先輩をボディーガードとしてずっとそばに置くってのもありかもね」
 勝手にトモミが話を進める。
「ボディーガード兼パートナーだったりして」
「うっそぉ!」
「いやぁん☆」
 まぜっかえしたユキに黄色い声が湧き上がる。

 


「あなたたち、こんな時間まで何してるんです!?」
 とがった声に皆がびくっとする。
「山本シナ先生!」
 がらりと襖を開けたシナだった。
「明日も早いんだからもう寝なさい。あとそうこちゃん、遅い時間に食べるのは体に毒です。夕食後のおやつは控えるように」
「はあい」
 肩をすくめたそうこに眼をやると、襖を閉めて立ち去るシナだった。

 

 

 -ホントに口さがない年頃なんだから…。
 長屋の廊下を歩きながら内心ぼやくシナだった。そしてちらりと前栽に眼をやる。
 -それに、噂話に夢中になると相手の気配に気づかなくなる癖、直させなきゃ。
 そこに忍たま上級生たちが身を潜めていることにとっくに気づいていたシナは独り言を装って声を上げる。
「さ、雨に濡れて風邪をひかないうちに、休むとしましょうか…」

 

 

 

<FIN>

 

 

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