Settlement


さらわれた庄左ヱ門」の続きです。ひどい目に遭わされた庄左ヱ門の仕返しに学級委員長委員会の先輩たちが立ちあがります。

Settlementとは解決とかいう意味ですが、このお話の中ではあくまで当座の解決にとどまりそうです。なぜなら、庄ちゃんが望む最終的解決とは、「戦のない世の中」だろうと思うからです…。



「…で、あの取引を見たガキは結局のところまだこのあたりをうろちょろしているというわけだな」
「それも、忍術学園の関係者とはな…」
 オシロイシメジ城の忍者隊の一室で、忍たちがぼそぼそと話している。庄左ヱ門をさらった忍たちだった。
「ったく、とっとと殺っちまっとけばよかったものを、お前らが小遣い稼ぎなどと変な気起こすから…」
 苛立たしげに吐き捨てたのは、人事部のヒューマンリソース担当の忍である。
「んなこと言ったってよ…」
 庄左ヱ門をさらった一人が抗弁する。「まさか忍術学園が絡んでるとは思わなかったんだよ。身体検査した時は忍たまらしいものは何も持ってなかったし」
「いずれにしても、忍術学園としては、俺たちが何をしたかをしっかり目に焼き付けたってことだ」
 ヒューマンリソース担当が確認するように一言一言に力を込めて言う。「いずれ、それ相応のお返しにお出ましになるだろう」
「それ相応?」
 忍の一人がおどおどと声を上げる。声の方をじろりと睨んだヒューマンリソース担当は続ける。
「少なくとも、その覚悟は必要だってことだ。あとは学園がどう出てくるかだな」



「じゃ、今日の学級委員長委員会はこれで終わり!」
「失礼します」
 勘右衛門が宣言すると、ぺこりと頭を下げて庄左ヱ門と彦四郎が部屋を後にした。
「…さて、これからが本題だが」
 壁にもたれて足を投げ出していた三郎がにやりとする。
「…だな」
 念のために後輩二人の気配が消えたか確認していた勘右衛門が頷く。
「結論から言うと、私たちのおしおきはまだ終わっていない」
「ああ」
 船に乗せられた庄左ヱ門を救出することはできた。騒ぎに紛れて庄左ヱ門を取り返された大坂屋の船は、兵庫水軍が放った火に包まれ泉州の海に沈んだ。船を操っていた琉球人の海賊たちはどこかへと姿を消した。そして、大坂屋は禁じられている奴隷貿易に手を出した証拠を堺の会合衆たちにつかまれ、ひっそりと商売をたたんで堺から撤退したと聞いた。だが、庄左ヱ門をさらった関係者の中でまだ何の罰も受けていない者がいる。
「で、やるのか? オシロイシメジの連中にも」
「トーゼン」
 勘右衛門の問いに、いともあっさり三郎が答える。
「で、どうするんだ?」
「まだ私もはっきりした計画を立てたわけではないけど…庄左ヱ門が見たという火縄の取引は、何かのヒントになるかもしれないね」
「火縄、ね」
 勘右衛門が眼を細める。火縄、それも庄左ヱ門によると荷車いっぱいの大量の火縄を山中で取引していたという。「オシロイシメジはあちこちと戦をやっているというからな…火縄はいくらあっても足りないだろうな」
「その取引をつぶせば、連中の戦力を削げることになる」
「そういうこと…ところで」
 考え深げに言う勘右衛門に、三郎がにやりとして頷く。そして天井に向けて声をかける。
「そんなところに分かりやすくいるくらいなら、入ってきたらどうだい?」
「なんだ。バレてたのか」
 天井板の一枚が外れて、降り立ってきたのは雷蔵である。
「またお前かよ」
 勘右衛門が呆れたように声を上げる。
「また言わせる気かい?」
 朗らかに言う雷蔵の肩に腕を乗せた三郎が割って入る。
「言うまでもないさ。鉢屋三郎あるところ不破雷蔵あり、だろ?」
「なんだ。せっかく僕が言おうと思ったのに」
 ははは…と笑い声が上がる。



「だが、庄左ヱ門をあのような目に遭わせたことについては、相応の罰が必要なのではないですか」
 ぐっと盃をあおった半助の眼は、昏い怒りでぎらついている、
 数日間、極度の緊張にさらされ続けたことと、監禁中はあまり食事を与えられていなかったこともあって、救出された後の庄左ヱ門の体力の消耗は激しかった。学園までずっと庄左ヱ門を背負って歩いた半助には、背中のあまりに軽く痩せた感覚がまだはっきりと残っていた。その感覚を思い出すたびに、自分の大切な生徒をそのような目に遭わせた者に対する怒りがこみあげてくるのだった。
「まあ、土井先生。お怒りはごもっともだが、ここはひとつ冷静にだね…」
 伝蔵が苦笑しながらなだめる。
「…ですね」
 言葉を裏切って声は怒りに震えている。手酌で盃を満たして一気に飲み干す。
 伝蔵の言うとおりであることは理解していた。感情、とりわけ怒気にまかせて行動することは、合理的判断から逸脱しやすい。だから、ここはオシロイシメジ忍者に対する怒りは措いて考えなければならない場面だった。そう何度も自分に思い込ませようとしても、感情を切り分けることができずに苦しむ半助だった。
 そんな半助を痛ましげに伝蔵は見ていた。
 -怒りを制御できかねる気持ちはよく分かる。だがな…。
 半助にとって、一年は組の生徒たちがただの教える対象としての生徒ではないことは、伝蔵にはよく分かっている。忍として長いこと生きてきた伝蔵から見ても、半助が学園に来るまでに通りすぎてきた世界はあまりに昏く、過酷なものだった。だからこそ、は組の生徒たちの存在が、半助にとって大きな救いとなっているのだ。そんなかけがえのない生徒をあのような目に遭わされて、平静でいられるわけはないだろう。優秀な忍であり、セルフコントロールを身につけているはずの半助がこれほど感情の処理に苦しんでいること自体、この事件は重大なのだと考えずにはいられない。杯を手にしたまま俯いている半助になにか声をかけなければと思ったとき、
「失礼します」
 部屋の外からの声に、半助がはっとして顔を上げる。
「ああどうぞ。お待ちしておりましたよ」
「それでは…おお、すでに始めておられましたか」
 入ってきたのは五年い組担任の鉄丸である。酒の入った瓢箪と、欲し魚を提げている。
「木下先生…」
「ああ、私がお呼びしたのです。ちょっとしたお話をしたいと思いましてな…だが、まずは一杯やろうではありませんか」
「お邪魔しますよ」
 伝蔵のすすめた円座にどっかと胡坐をかいた鉄丸に、伝蔵が盃を満たす。
「それでは」
 軽く杯を掲げた3人が一気に飲み干す。
「ぷはぁ、やはり酒は最初の一杯が格別ですなぁ」
 陽気な声を上げた鉄丸だが、すぐに声を低める。「で、学級委員長委員会の2人だが」
「三郎と勘右衛門ですか?」
 鉄丸の杯を満たしながら半助が意外そうに訊く。
「さよう」頷いた鉄丸は、杯にちょっと口をつけると続ける。「オシロイシメジに相応の落とし前をつけさせる気らしい…気持ちは分からんでもないが、困ったものだ」
「しかし、プロの忍が相手ですよ」
 半助が思わず身を乗り出す。
「そういうことです。大坂屋の船の件は、相手が海賊といえわれわれ忍の手の内を知らないからうまくいったようなものだ。だが、何を仕掛ける気か知らんが、プロを相手にするのは危険だ…それはそれとして」
 鉄丸が小さくためいきをついて半助に眼を向ける。
「庄左ヱ門はずいぶんひどい目に遭ったそうですな。大坂屋の蔵では籠に入れられて監禁されていたとか」
「そうです。ろくに食事も与えられなかったそうです。あまりに身体が軽くなっていて、私は…」
 ふたたび背の感覚を思い出した半助が、歯をぎりと噛みしめる。余計なことを思い出されてしまった、と伝蔵が肩を落とす。



「あ~あ、参ったよなぁ」
 夕食の席で椀を手に取りながら兵助がぼやく。
「どうかした?」
 煮物をぱくつきながら勘右衛門が訊く。
「火薬委員会でさぁ」
 何度目かのため息をつきながら兵助が小さく首を振る。
 -げ、ひょっとして、また火薬委員には六年の先輩がいないって俺にグチる気?
 そうなるときわめて面倒だと勘右衛門は考える。だからと言って食べかけの膳を持って別の席にすたこら避難するのもあまりに露骨だし…。
 だが、続いて兵助が口にした言葉に、勘右衛門は口の中の煮物がのどに詰まりそうになる。
「…注文した火薬がなかなか届かなくてさ。山田先生が堺の福富屋さんに注文してくださったそうなんだけど、オシロイシメジ忍者が狙っているらしくて、なかなか学園に運べないんだってさ」
「それ、どういうこと?」
 辛うじて何気ない態度を装いながら訊く。
「どういうことって… オシロイシメジも硝石を欲しがってるってことだろ?」
 気のない返事をして、兵助は汁をずず、とすする。
「なんでオシロイシメジが硝石を欲しがるのさ」
「今年は海が荒れていて、硝石を積んだ船が日本になかなか着かないらしいんだ。それなのにあちこちで戦が起きてて火薬を使うもんだから、硝石の在庫が足りなくなっているらしい。福富屋さんは学園のために硝石を集めてくれたらしいけど、どこからかオシロイシメジがそのことをかぎつけて、道中で奪おうとしているらしい。そんな情報があるから、堺から出せないらしいんだ」
「へ~え」
 感心したように頷きながら、この情報を生かす法はないかと勘右衛門は考えをめぐらす。
 -オシロイシメジが硝石を狙っているというなら、そこを衝くってのもアリだな…。
「…でも、早く硝石が届いてくれないと、学園で使う火薬が足りなくなってしまう。火薬の在庫に責任を持つ火薬委員としてはすっごく困るんだ…」
 まだ続いている兵助の繰り言を半ば聞き流しながら、勘右衛門はなおも考え込む。
「あのさ、勘右衛門、聞いてる?」
 兵助の尖った声に考えが断ち切られる。
「ふぇ!?」
 思わず頓狂な声を上げてしまう。
「…ったく、俺がこんなに困ってるのに上の空だし…学級委員長ならもっとクラスメートの相談に親身に乗ってくれよな」
 ぶつぶつ言いながら兵助は煮物に箸を伸ばす。



「…っていうことなんだけど」
「おもしろいね」
 夜の学級委員長委員会室には、いつになく灯がついている。いま、勘右衛門が兵助から聞いた話を三郎に話しおわったところだった。
「だろ?」
 勘右衛門がにやりとする。「つまり、忍術学園が硝石を大量に運ぶってことになれば、オシロイシメジは間違いなく食いつくってことだ」
「もう一つ。庄左ヱ門が言ってたろ? 山の中でオシロイシメジが大量の火縄を取引してたって」
「そうだったな」
 勘右衛門が頷く。「山の中ってのがいかにもだよな。よっぽど表に出せない取引ってことだろ?」
「オシロイシメジみたいにあちこちで戦をやってる城なら、大っぴらに火縄を調達しても誰もおかしいなんて思わない。それでもあえて秘密にするってことは、それなりの理由があるってことさ」
 考え深げに三郎が言う。「ま、その理由を探るのはちょっとばかり骨が折れそうだけどね」
「別にそんなの俺たちが探る必要なんてないだろ」
 ごろりと寝そべった勘右衛門があっさりと言う。「ちょっとばかりオシロイシメジに痛い目あわせりゃいいんだろ? だったら硝石狙って食いついてきたところを叩くだけでもダメージになるだろ。硝石が手に入らなきゃ連中の戦力は相当落ちるんだから」
「だが、それだけではつまんないって思わないかい?」
 すでになにやら思いついたらしい三郎が眼を細める。
「…言うと思ったよ」
 思いのほかの三郎の食いつきに、勘右衛門は早くも引き気味になる。「で、どうするのさ」
「もちろんオシロイシメジの出方によるけどね」
 三郎は思わせぶりに言葉を切る。「オシロイシメジはあちこちで戦に手を広げている。ということは、城の守りは手薄になっている可能性が高いんじゃないかなって思うんだ」
「へえ…それは」
 起き上がった勘右衛門の眼もにわかに光る。「探ってみる価値があるかもね」



「なあ、やっぱりまずくないか?」
 兵助が軽く眉をひそめる。
「俺もそう思う。俺たちだけならともかく、福富屋さんまで巻き込むのはどうかと思うぞ。それにこの話、火薬委員会の顧問の土井先生には話してないんだろ?」
 その隣に端座した八左ヱ門も低くささやく。
「まずは敵情偵察からさ。なんの問題がある」
 すまし顔で勘右衛門が言う。顔を見合わせた兵助と八左ヱ門が小さく肩をすくめる。
 3人は福富屋の座敷にいた。火薬委員として学園の発注した硝石の運搬手段について詰めたいという名目で、半助に外出許可をもらった兵助だった。八左ヱ門は付き合いで、ということで外出許可をもらっていたが、勘右衛門は無断外出である。学級委員長委員会として庄左ヱ門の身に起きたことに怒り狂っている勘右衛門が、このような微妙な案件で外出許可が出るはずはなかったから。
「だけどさ…」
 ふたたび兵助が反論を試みかけたとき、「お待たせしましたな」声がして襖が開いた。
「「よろしくお願いします」」
 3人が頭を下げる。
「いえいえ、こちらこそ兵庫水軍さんから忍術学園さんまでどのように運ぶかご相談に伺わなければと思っていたところです」
 如才なく答えた福富屋だったが、ふいに声をひそめて続ける。「とはいえ、ここではまずい。場所を変えますぞ」
「場所?」
「そうです。どうやら今回の話は、この店の者から漏れた可能性が高い。この店に限らず、堺の店には複数の城の忍者が従業員を送り込んでいるようですからな」
 そこまでひそひそ声だった福富屋が普通の声になって続ける。「では、現物をご覧いただきながらお話しましょう。ご案内します」
「あ…よろしくお願いします」
 早くも腰を浮かせている福富屋に、3人が慌てて続く。



「この通り、品物はすでにご用意してあるのですがな」
 ずらりと立ち並ぶ蔵のひとつに案内しながら福富屋はぼやく。「オシロイシメジ城に狙われているとなれば、それなりの警備体制も必要ですが、私どもでは対応しかねるところがあるのです」
「なるほど」
 上の空で返事をしながら兵助が眼を輝かせる。
 -すごい、学園の煙硝蔵の何倍、いや、何十倍もある…!
 蔵の中に作りつけられた棚には、おびただしい数の硝石の壺がずらりと並んでいた。思わず眼を奪われずにはいられない光景だった。 
「ところで、オシロイシメジ城は火縄もずいぶん手に入れているらしいですね」
 素知らぬ風を装って勘右衛門が訊く。
「まあ、オシロイシメジ城も諸方で戦をしておりますからな」
「あまり表に出せないルートでも入手しているようですね」
 思い切って踏み込んでみるが、ポーカーフェイスでは一枚上手の福富屋がため息交じりに言う。
「そうですな。あまり堺を通したくないのでしょう」
「なぜですか?」
「さよう。堺では多くの鉄砲鍛冶がおりますから、諸方の大名方がよく調達に来られますが、同時にどの大名方がどれだけ調達されたかという噂もすぐに広まってしまいます。それによって、戦の準備をしているかどうかがすぐに分かってしまう。それを嫌がる向きは、どうしても堺を通さずに調達されようとなさっているようです。私どもにはあずかり知らぬところですが」
 そうは言いながらも、ある程度の情報は把握しているような口ぶりである。
「でも、オシロイシメジ城があちこちで戦をしているのは、誰でも知っていることでは?」
 至極もっともなことを八左ヱ門が指摘する。
「そうでしたな。であれば、別の理由があるのかも知れませんな」
 思わせぶりな福富屋に、「別の理由とは?」と八左ヱ門が食らいつく。
 -さすが八左ヱ門。直球勝負だな。
 内心苦笑した勘右衛門だったが、続いて放たれた福富屋の台詞に思わず背が硬直する。
「さよう。あるいは調達した火縄が使い物にならなかったので、代品を求めているのかも知れませんな」
 -なんだって!? そんなことまで福富屋さんは知ってるのか?
「でも、どこの城も火縄は数はあっても困ることはないのではないですか?」
 驚嘆していた勘右衛門だったが、苦労して声に出ないようにしながら訊く。
「ま、それはそのとおりですがな。それだけではない事情というものがあるのですな」
「事情とはなんですか?」
 勢い込んで八左ヱ門が訊く。だが、こんどは福富屋も意味ありげな微笑を浮かべるだけである。



「福富屋さんのおっしゃる『事情』が何かは分からないが、間違いなくオシロイシメジが裏から火縄を調達していることはご存じということだ」
 堺からの道中だった。勘右衛門が興奮を抑えきれないように声を弾ませる。
「だけど、それ以上のなにものでもないだろ?」
 兵助が冷静に突っ込む。「俺たちでも知っている以上の情報が得られたわけじゃない」
「そりゃそうだけどさ…」
 気勢をそがれた勘右衛門が肩をすくめる。「でも、庄左ヱ門がちらっと見ただけだった火縄の裏取引が本当だったってことだろ? それに、もし福富屋さんがおっしゃるように、それが使い物にならなかった火縄の代品の調達だったとすれば、オシロイシメジにある火縄は見かけよりも戦力になってないってことだろ?」
「それはオシロイシメジにどれだけ火縄があって、そのうちどれだけが使い物にならないかを把握できてるなら有効な情報だけど」
 説き諭すような口調で兵助は続ける。「そうじゃないだろ?」
「それよか、勝手におとり作戦なんてことまで話してきちゃったけど、いいのかよ」
 頭の後ろで腕を組んでいた八左ヱ門が気がかりそうに口をはさむ。
「まあね」
 兵助は前を向いたまま言う。「土井先生から、どういう手段を取るかは俺たちに任せるというお言葉はいただいている。それに、こういう場合はおとりを使うのは常識だろ?」
「だったら、敵さんもおとりを疑うのが常識ってことだろ?」
「わかった! それで戦力を分散させるってことだな!?」
 勘右衛門が弾んだ声で指を鳴らしたので、兵助と八左ヱ門がぎょっとしたように顔を上げた。
「ま、そうともいえるけどな…」
 兵助が当惑した声を上げる。
「でもさ、オシロイシメジにバレちゃったらおとりじゃねえだろ」
 道端にしゃがんだ八左ヱ門が、落ちていた枝を使って地面になにやら描きはじめる。
「ここが堺だろ。で、兵庫水軍が水軍の本拠地まで運んで、そこから学園までは俺たちが運ぶ。こっちがおとりだよな」
「そう。で、堺から別ルートで学園に運ぶ。こっちが本命」
 地面に片膝をついた兵助が、八左ヱ門から枝を受け取って書き加える。「福富屋さんには毎日馬借や車借がたくさん出入りしているから、そのなかに紛れこませて、行先も学園じゃない別の商人か何かにして出せば、店に潜り込んでいるオシロイシメジの手先もごまかせるだろう」




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