料理勝負(2)

 


「ったく、言いだしっぺの仙蔵がいちばん手抜き料理を作りやがって…」
 留三郎が拳を握りしめる。
「せんぱい、ぼく、もうお腹ぺこぺこですぅ」
「ぼくも…」
 喜三太と平太が腹に手をやりながら訴える。
「イモ雑炊だけでは仕方がないな…ところで喜三太、しんべヱはどうした」
「部屋でうごけなくなってます」
「そうか…腹が空きすぎたんだな」
 納得したように留三郎は頷くが、実態は違った。喜三太が部屋まで呼びに行ったとき、空腹に我慢できなくなったしんべヱは、お菓子を食べ過ぎて動けなくなっていたのだ。
「とにかくだ、六番手の用具委員会としては、もう少しまともなものを作るとしよう…作兵衛、買出しに行った連中は、なにを買ってくることになってるんだ?」
 血の気が多く好戦的な一方で、常識人でもある留三郎にとって、食事とはごくごくまっとうであるべきものである。敵への工作ならともかく、何かを仕込んだり面倒だからと手抜きをしたりということは、おおよそ理解不能なことである。まして小さい後輩たちが腹を空かせていれば、まともなものを食べさせてやろうという気持ちはもはや義務感に近い。
「はい…米と野菜と味噌を買ってくる予定になっています」
 長次たちの残したメモを見た作兵衛が報告する。
「ふむ、飯と野菜だけでは、ちょっと物足りないな…」
 あごに手を当てて考えてるところへ、荷車の軋む音が近付いてきた。
「あ、買出し隊が戻ってきました!」
 勝手口から外をのぞいた作兵衛が、弾んだ声を上げる。
「おう、戻ってきたぞ…なんだ、今日の昼飯の当番は用具委員会か」
 勝手口から顔をのぞかせた文次郎がぶすっと言う。
「なんだとはなんだ!」
 思わず拳を握って食ってかかるが、ここはケンカしている場合ではないと辛うじて自分を押しとどめる。
(留三郎、そう怒るな。いい食材がある)
 文次郎に続いてぬっと姿を現したのは長次である。
「どうした、長次」
(干し魚が安かったので、買ってきた)
「お、干し魚か。ありがたいな」
 これで小さい後輩たちにまともな飯を食わせてやれる、とほっとする。おもわず笑顔になる。
「これで、少しは腹にたまる飯が作れる…野菜もたくさんあるな。よし、煮物にしよう。これの出番だ」
 留三郎が取り出したのは、桶を加工したらしい道具である。
「なんですかそれ?」
 喜三太が首をかしげる。
「俺が開発した、野菜みじん切り機だ。おばちゃんの包丁さばきには及ばないが、これで作業が省力化できる」
「どうやってみじん切りにするんですか?」
 平太も興味深げにのぞきこむ。
「皮をむいた野菜をこの中に入れる。中に回転部分があって、刃がついている。これを外にあるハンドルを使って回転させれば、あっという間にみじん切りになる、という寸法さ」
 留三郎が誇らしげに説明する。
「…刃には割れた手裏剣や欠けた剽刀を使ってリサイクルしてるんだぞ」
「また経費でしょーもないモノ作りやがって…」
 文次郎が舌打ちする。
「…つべこべ自慢してるヒマがあったら、とっとと飯作りにかかりやがれ」
 言い捨てて勝手口を後にする。留三郎の開発した道具の是非はともかくとして、仙蔵たちにまかせるよりよほどマシな食事にありつけそうなことに内心ほっとしながら。

 


「…あの、鉢屋先輩、尾浜先輩」
 庄左ヱ門が見上げる。
「ぼくたち学級委員長委員会も、何か作らないといけないんですか?」
「そういうことのようだな」
 割烹着に腕を通しながら、勘右衛門が答える。
「…で、どうする? 三郎」
「ああ」
 心ここにあらず、といった風で生返事をする三郎である。
「参ったよなあ。七番手ともなると、そろそろネタ切れだぜ」
 勘右衛門が腕を組む。
「ネタ切れ…そうか、その手があったか」
 三郎がぽんと手を打つ。
「どうした、三郎。何か思いついたか?」
 勘右衛門が振り返る。
「ネタ切れのときには、最初に戻ればいいってわけだよ」
「最初に?」
 三郎の答えは、勘右衛門をよけいに混乱させたようである。
「つまり、一番手の保健委員会の料理をヒントにするんだ」
「保健委員会の、ですか?」
 庄左ヱ門と彦四郎が顔を見合わせる。
「そうさ。保健委員会といえば、期限切れの薬を使った薬膳料理だ。今回もやってくれたようだが、そろそろまた薬種を使っても問題はないだろう」
「というと?」
「以前、図書委員会の中在家先輩に聞いたことがある。天竺のカレーは、実はほとんど漢方の薬種からできているというんだ。ウコンとか、唐辛子とか、肉桂(シナモン)とか、ね」
「そうか。それに、カレーなら一皿ですむから、人数が少ない学級委員長委員会でも作りやすいというわけだな」
 勘右衛門が頷く。
「そういうこと」
「で、鉢屋先輩。何をどのくらい入れるかは、中在家先輩に教えてもらっているんですか?」
 庄左ヱ門が訊く。
「いいや」
 あっさりと答える三郎に、全員が脱力する。
「いいやって…それじゃ、どうやって作ればいいか分からないじゃないですか」
 彦四郎が声を上げる。
「まあ、何とかなるだろう。天竺のカレーも、薬種の調合によっていろいろな種類があるそうだ。われわれだって、忍術学園風カレーを作るくらいの気合でやれば大丈夫さ」
「マジかよ、三郎」
「だいじょうぶですか?」
 たじろぐ勘右衛門と庄左ヱ門をよそに、三郎はさっさと歩き出す。
「何が心配なもんか…さ、伊作先輩のところに、期限切れの薬種をもらいに行こう!」

 

 

「三郎はともかく、勘右衛門がついていながらこの様とは…」
 腹を押さえた雷蔵が呻く。
「なんか、まだお腹がごろごろいってるような…」
 久作が座り込む。
「ムリもないっすよ、あんな怪しげなカレー食わされたんじゃ」
 とっくに座り込んでいるきり丸が、視線を泳がせる。
「…庄ちゃんも、しっかりしてるようでいて時々やらかすからなぁ…」
 学級委員長委員会のカレーは、結果的に学園中に食あたりをもたらした。
「それにしてもあのカレー、誰も味見をしなかったんですか?」
 久作が恨みがましく言う。
「勘右衛門から聞いたが、薬味の調合は三郎だけがやったらしい。あとのメンバーは薬種をすりつぶすだけで手一杯だったらしいな」
「そういえば庄左ヱ門も、すりこぎを使いすぎて腕がしびれたって言ってました」
 雷蔵ときり丸が聞いた話を披露する。
「…つまり三郎先輩は味オンチというわけなんですね」
 久作が結論づけたときに、ぬっと大きい影が厨房に現れた。
「中在家先輩…」
(文句を言っている場合ではない。八番手の図書委員会が昼食を作らなければならないのだぞ)
 もそもそと呟いた長次は、すでに割烹着姿である。その手には南蛮の言葉で記された書物がある。
「ひょっとして中在家先輩…天竺料理の次は南蛮料理にするおつもりでは…?」
 それまで黙っていた怪士丸が声を上げる。
(そうだ。テンペラール(temperar・てんぷら)すなわち油揚げを作る)
「油揚げ、ですか?」
(ポルトガルの料理に、魚や野菜に小麦粉と卵を溶いた衣をつけて油で揚げるものがある)
 説明しながら、長次はすでに衣を作り始めている。
「キノコもたくさんあるんですけど…」
 笊に山盛りの茸を指差しながら、怪士丸が呟く。
「てか、怪士丸。いつこんなにキノコとってきたんだ?」
 きり丸が訊く。
「一年ろ組のみんなでとってきたんだ…ろ組は木陰や茂みが得意だから」
「…あのなあ、ろ組らしいといえばそうなんだろうけどよ…」
 きり丸が言いかけたところに長次が口を開く。
「静かに! 中在家先輩がなにか仰っている」
 雷蔵がきり丸と怪士丸を制する。長次がもそりと言う。
(キノコの油揚げもうまいかもしれない)
「デザートにボーロ(ケーキ)があったりするとカンペキだとおもいませんかぁ?」
 きり丸が持ちかけるが、長次は相手にしない。
(ボーロを作っている時間がない。それに、昼食にデザートはぜいだくだ)
「そうスか…がっかり」

 

 

「図書委員会は南蛮料理でだいぶ株を上げたようだが、俺たち生物委員会もうかうかしていられない」
 割烹着姿の八左ヱ門の口調には焦りがにじんでいる。
「…それに、まずいことがある」
「まずいって、なんですか?」
 三治郎が見上げる。
「図書委員会の料理は材料費が食券の値段を超えちゃったらしい。どうやら油揚げに使った卵と小麦粉と油の値段がかさんだらしいんだ」
「でも、そんなの図書委員会の責任じゃないですか」
 孫兵が口を尖らせる。
「そうだ。だが、全体として経費の範囲に収めないと、食費を追加で徴収することになってしまう。だから、潮江先輩に、俺たち生物委員会は材料費を抑えるよう言われちゃったんだ」
「そんなの不公平ですよ…図書委員会の尻拭いなんて」
 孫兵の声がさらに高ぶる。そうでなくても厨房にジュンコを連れ込むことを禁止されて不機嫌なのだ。
「俺もそう思う。だが、油揚げの材料には金をかけてないのだから、そのくらいは大目に見ろとも言われている…それも事実だ」
 図書委員会が作った油揚げは、一年ろ組が採ってきたキノコと、残っていた野菜をタネにしていたので、たしかに材料費はかかっていなかった。
「だけど、そのキノコがあれじゃあ…」
「ろ組が木陰や草むらが得意だっていっても、知れたもんだし…」
 虎若と三治郎が顔を見合わせて肩をすくめる。
「まあな。そういや、斜堂先生は大丈夫なのかな…」
 腕を組んだ八左ヱ門が宙を仰ぐ。ふだんからきわめて少食な影麿だったが、自分のクラスの生徒が取ってきたということで、キノコの油揚げをひとつだけ口にした。だが、運の悪いことにそのキノコは、他の食用キノコに紛れ込んだワライタケだったのだ。
「新野先生が処方した薬で、いまは落ち着いてると数馬は言ってたが…」
 当惑したように腕を組んで孫兵が言う。
「それにしても、すごかったですよね」
「…だな」
 恐ろしげに呟く一平に、八左ヱ門が頷く。とつぜん口から泡を吹いた影麿の怪鳥のような甲高い笑い声は、まだまがまがしく耳にこびりついている。
「ま、それは措いといてだ…ここは、生物委員会の底力を見せるときだ!」
 気を取り直して、拳を握って言い切る八左ヱ門に、後輩たちの訝しげな視線が集まる。
「生物委員会の底力って…やっぱ虫ですか?」
 いやそうに一平が確認する。
「むろん虫も食う。いいタンパク源だからな。あとは、生物委員会の菜園だってあるじゃないか」
「ああ、そういえば!」
 三治郎が手を打つ。
「…馬のエサにする大豆とか、鳥のエサにする青菜とか、いろいろありますよね!」
「そうだ。まだイモとかキノコが残っているから、それも加えて煮物にしたり汁にしたりできるだろう。それにイナゴの乾煎りでもつければ完成だぜ!」
 -キノコ、まだ使うんですか…?
 -べつにイナゴがなくても完成だと思うんですが…。
 三治郎たちが視線を交わすが、八左ヱ門はきびきびと指示を下す。
「よし、これで決定だ! 孫兵と一平は菜園で必要なものを収穫してこい。俺と三治郎と虎若はイナゴを捕りに行くぞ!」
「「は、は~い」」

 


「忍術学園の皆さんに、話しておきたいことがある」
 翌日の朝食後、般蔵が教員と各委員会の代表を集めた。
「どうされましたか」
 いぶかしげに仙蔵が訊く。腕組みをして眼を閉じたまま、般蔵がゆるりと口を開いた。
「私は、食堂のおばちゃんの代役として学園に来た。しかし、今日に至るまでいまだに一度も料理をしていない。各委員会諸君の作る料理の審判役ということで、それもまた仕方ないことなのかもしれない…だが!」
 般蔵がかっと眼を見開く。
「忍者食研究家としての私は、やはり他人の作ったものを食べ続けるというのはどうも性に合わない。というか、むしろストレスだ。従って、申し訳ないが私は学園を去ることにした。すでに食堂のおばちゃんにはその旨知らせてある」
「え、知らせちゃったんですか!?」
 思わず新野が動転した声を上げる。般蔵には、食堂のおばちゃんが休暇を取る理由は知らせていなかった。
「知らせました。今日の夕方には学園に戻られるそうです。そう、返事がありました」
 -やったぜ!
 -やったな!
 五年生たちは、うれしさを隠し切れずに目配せしながら互いに肘で突きあっている。六年生たちも安堵の表情を浮かべている。
「そうでしたか…戻られると」
 喜びを苦労して抑えている生徒たちの傍らで、新野が重い口調で呟く。
 -たった数日で戻ってこられるが…果たしておばちゃんは、十分に体調を回復させられたのだろうか…。
「はい。そういうことでした…では、私はこれでごめん」
 事情を知らない般蔵は、軽く一礼すると食堂を後にした。
「…そういうことだ。食堂のおばちゃんが戻られるのは夕方ということだから、今日の昼食と夕食の仕込みまでは忍たまたちでやっておくように。いいな」
 -回復途上の状態で仕事に戻るというのが、この種の虚証にはもっとも悪いのだが…。 
 考えこむように思いつめた表情で席を立つ新野に続いた雄三が、それだけ指示して姿を消した。
「さて、そういうわけだが」
 教員たちが去った食堂で、仙蔵が立ち上がる。
「だから! なんで仙蔵がそこで仕切る!」
 文次郎が歯軋りする。
「ここまで各委員会及びくノ一が食事の準備をしてきたが、まだひとつだけ、シフトが廻ってきていない委員会がある…とすれば、当然、おばちゃんが戻ってくるまでの食事の当番を務めてもらうのが筋だと思うがどうだろう」
「なに言ってやがる! お前が勝手に会計委員会をシフトから外したんだろうがっ…」
 思わず立ち上がった文次郎が怒鳴る。が、言い終わらないうちに、他の生徒たちがいっせいに口を開く。
「賛成!」
「文次郎、頼んだぞ!」
「当然、ギンギンにうまい飯を作ってくれるんだろうな」
「期待してるぜ」
 言いながら、席を立って食堂を後にする。
「な…俺がいつそんなことをすると…」
 ぽつんと残された文次郎の肩を仙蔵がぽんと叩く。
「ま、そういうことだ。よろしく頼むな、会計委員長殿」

 


「なんで会計委員会も食事の準備をしなきゃいけないんですかぁ」
「買出しやったうえに、食事の準備なんて不公平です」
 口々に後輩たちが不平を述べるが、文次郎の一喝でたちまち静まり返る。
「うるさい! とにかくやることになったのだ! 忍とは、与えられた任務はどんなことがあってもやりとげなければならぬのだ! これも任務のひとつと思って、つべこべ言うな!」
「で、何を作るんですか?」
 三木ヱ門が訊く。腕を組んでじろりと後輩たちを一瞥すると、文次郎は口を開いた。
「つねづね俺は思ってるのだが、忍術学園の忍たまは、食堂のおばちゃんのうまい飯に慣れすぎている。特に下級生は、それが当たり前だと思っている節がある…だが、俺がいつも言ってるように、忍は量の多少を選ばず、味の濃淡を問わず、慎んで清き食をいただくべきなのだ。この機会に、俺はこの会計委員会スピリットを他の委員会の連中にも教えてやるべきだと思う」
 文次郎の長広舌は、下級生たちには理解が難しかったが、辛うじてうまい食事を作る気がないことだけは把握できた。
「…というと…」
「敵地に潜入したとき、忍は何を食べるか。佐吉、言ってみろ」
「干し飯…ですか?」
「そうだ。その他、虫や野草など、食べられるものは何でも食べる、それこそが任務を全うするために求められるものだ」
「それってどういう…」
 団蔵がおろおろと訊く。
「決まってるだろう。全員で食べられる野草や虫、その他の食材を調達してくるのだ。黒古毛先生は帰られてしまったが、我々こそ黒古毛先生にも認めてもらえる忍者食を作るのだ。いいな!」
「「は~い」」
「声が小さい! 分かったらとっとと行け!」
「「は、はい!」」

 


「お前たち、ちょっと」
 文次郎が裏山に向かって行ったのを見送ると、三木ヱ門は小声で後輩たちを呼び集めた。
「なんですか、田村先輩」
「食材集めはちょっと待つんだ…私に、考えがある」
「なんですか?」
「潮江先輩のおっしゃるように、干し飯や忍者食もいいだろうが、もう少しマシなものを食いたいとは思わないか?」
「そりゃ思いますけど…でも、潮江先輩がああおっしゃってるんだし…」
「勝手に方針変えたりなんかしたら、えらいことになりますよ」
 佐吉と左門が心配げに声を潜める。
「もちろんそうだろう…だが」
 三木ヱ門はいっそう声を低める。後輩たちが頭を寄せる。
「…実は、六年の立花先輩や食満先輩に言われたんだ。図書委員会や生物委員会がかなりの食材を余らせている。それを活用しろってな」
 自分にそう告げた仙蔵がしたように、三木ヱ門も小さく笑った。
「そういうことにしてくれている、ということですね」
 きょとんとしている左門と団蔵に代わって、佐吉が眼を輝かせた。
「そういうことだ。だから、お前たちは立花先輩と食満先輩のところに行って『余った』食材をもらって来て、ついでに何を作ればいいかも聞いてこい。私は潮江先輩のところで時間を稼いでいるから」
「「はい!!」」
 眼を輝かせて走り去る後輩たちに眼をやりながら、三木ヱ門は小さく微笑む。
 -ま、潮江先輩は怒られるかもしれないけど、一品か二品でも普通の料理があれば、みんなとりあえずは腹を満たせるだろうし、な。

 

 

「どうもご迷惑をおかけしました」
 夕刻の学園長の庵に、休暇から戻った食堂のおばちゃんがいた。
「いや、それはまったく構わんのだが…また急に戻ることになってしまってすまなかったの」
 大川が当惑声で応える。
「いいえぇ、そんなことはちっとも。それに、一人でいると、なんだか賑やかな学園が懐かしくって。やっぱり、私は、いつも生徒たちの声が聞こえる学園が一番だって思いました」
「それならばいいのですが…ほんとうに、大丈夫ですか?」
 傍らに控えた新野が気がかりそうに声を上げる。
「ほんとうに大丈夫ですよ、新野先生…それにしても」
 おばちゃんは懐から巻紙を取り出した。
「どうされましたかな?」
「私の留守中のメニューを見せてもらいました。みんな、限られた材料を工夫して料理していることがよくわかりました…いくつかの委員会をのぞいてですが」
「といいますと?」
「作法委員会と学級委員長委員会です! 差し出がましいようですが、作法委員会と学級委員長委員会は、料理とは何たるかについて徹底的に教育しなおす必要があると思うんです」
「ふむ、あの芋雑炊とカレーか…よし分かったぞ!」
 唐突に手を打った大川に、全員がぎょっとした。
「作法委員会と学級委員長委員会は、料理の補習授業を受けることとする。講師はおばちゃんじゃ。どうじゃ、すばらしい思いつきじゃろう!」

 

 

<FIN>

 

 

return to 料理勝負